解説民法 民法10条 後見開始の審判の取消し

解説民法 第11回

(後見開始の審判の取消し)
第十条  第七条に規定する原因が消滅したときは、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人(未成年後見人及び成年後見人をいう。以下同じ。)、後見監督人(未成年後見監督人及び成年後見監督人をいう。以下同じ。)又は検察官の請求により、後見開始の審判を取り消さなければならない。

「第七条に規定する原因が消滅したとき」
精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く状況でなくなったということです。
つまり、意思能力を回復したという状況です。

「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く」
自己の行為を結果について合理的な判断をする力=意思能力のないことを意味します。
※意思能力については、 解説民法 民法3条の2  を参照

「本人、配偶者、四親等内の親族、後見人(未成年後見人及び成年後見人をいう。以下同じ。)、後見監督人(未成年後見監督人及び成年後見監督人をいう。以下同じ。)又は検察官の請求により」

民法7条で定めている成年後見開始の申立権がある人と全く同じです。
開始の申立ができた人は、取り消しの申立もできるということになります。

「後見開始の審判を取り消さなければならない。」
裁判所の義務です。申立権者から、申立があって、自分で判断可能な状態なら、成年後見は取り消す必要があります。

ただ、実際のところ、裁判官は医師ではありませんので、本当に判断力があると言えるかどうかはわかりません。
ですので、ご本人の状況からして判断が明朗にできて明らかであると認められるとき以外は、医師等に鑑定をしてもらうことが要求されています。

なお、成年後見の取り消しの申立ではなく、能力が一部回復というような状況で未だ支援が必要という場合は、保佐や補助の申立をすることもありえます。
その場合、保佐や補助の開始がなされた場合は、後見は民法10条の申立を要さず、裁判所の職権で取り消しを行います。