解説民法 民法11条 保佐開始の審判

解説民法 第11回

(保佐開始の審判)
第十一条  精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、保佐開始の審判をすることができる。ただし、第七条に規定する原因がある者については、この限りでない。

「精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者」
保佐は、旧準禁治産制度に代わるもので、精神上の障害により、判断能力が著しく不十分な方を対象としています。
準禁治産制度時代は、能力の制限し、取引関係から除外しようという性格がありましたが、制限行為能力者を支援するものという趣旨に転換されています。

制度上、後見、保佐、補助の三類型のうちの真ん中の制度で、補助の「不十分」という表現に対し、保佐は著しく不十分という表現を用いています。
旧法の禁治産制度時代は、浪費者も対象としていましたが、現行制度では、単に浪費者であることで保佐対象とはしていません。
(判断能力が不十分な結果、浪費してしまっている場合には、対象となります。)

精神上の障害ですので、身体上の障害は一切対象外です。
また、裁判官は、法律のエキスパートですが、精神上の障害やその能力について診断できるわけではありませんので、医師の診断が必要となります。

「本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により」
申立権者は後見の場合と全く同じです。
解説民法 民法7条を参照

「家庭裁判所は・・・保佐開始の審判をすることができる。」
著しく不十分であると家庭裁判所が認めると保佐開始の審判がなされます。
その判断基準は、民法13条1項所定の重要な法律行為(不動産や自動車の売買、増改築、金銭の貸し借り等)について一人でできるかどうかというのが基準になります。
これが常に他人の援助が必要となれば、保佐に該当することになります。

「することができる」という文言ではありますが、判断力が著しく不十分であると認められれば、実態的に支援が必要かどうかに関わらず、保佐開始の審判がされなければならないとされています。

「ただし、第七条に規定する原因がある者については、この限りでない。」
成年後見に該当する場合には、保佐開始ではなく、成年後見の開始をするということです。