解説民法 民法1条 基本原則
解説民法 第1回
(基本原則)
第一条 私権は、公共の福祉に適合しなければならない。
2 権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。
3 権利の濫用は、これを許さない。
1項
私権とは→私法上認められる権利(⇔公法上の権利 国家又は公共団体と個人との間に認めらえるの権利)
私法上というのは、市民同士の間で認められる権利を指しており、財産権の他、人格権、親権等があります。私権を国が認めるということは、国家の力で、これを保護するということです。裁判所に訴えたり、強制執行ができたりするのは、国家のお墨付きがあってこそ実行性があります。
私権は一定の生活上の利益に対する法律的な力であると言われます。
一般に、その権利は三つに分けられると言われます。(4つとの説もあり)
人格権、身分権、財産権の三つです。
人格権=生命身体、事由、名誉、貞操など、人と一体のもの
身分権=親、子、妻、夫など身分上な地位
財産権=財貨を直接支配する物件、他人に請求する債権、著作権など無体財産権(知的財産権)
また別の観点からは
支配権=物や身分上の権利など自分の意思で支配する
請求権=権利の内容が他人の行為であるような場合
形成権=自分の意思に基づいて新しい法律関係を作り出す
という分け方ものあります。
公共の福祉に適合
→私権が認められるからこそ、一生懸命働けば、その分も財産が確保されます。資本主義の発展には、私権の保護は必ず必要です。しかし、市民同士といっても、大資本家と一般市民とでは、その力が全く違います。公害が起こる等社会的な問題も発生します。そこで、その制約として国家が保護する私権の範囲を、社会共同生活の全体としての向上発展の範囲で制限しようというものです。
なお、法律の原案では、「私権は公共の為めに存す」というものでしたが、これでは全体主義に陥りやすく、憲法の理念とは乖離するので、修正されています。
2項
信義誠実の原則と言われます。
独立自由な個人間で取引は行われますが、それは相互に相手方を信頼してこそ成り立つものです。
そのような相手方を裏切るようなことのないように誠実に行動するよう要請されます。
判例では、1万円の債務について、誤って9900円しか支払わなかったからといって、支払の効力を全否定するのは、やりすぎだというようなものがあります。
信義則は、別に法律で規制がされていない場面で、問題が起こったときに、それはあんまりだというような場面での裁判で使われており、裁判所による新しい規制、義務の創造的な側面があります。
そのような中で、歴史的には、雇用契約に付随して安全配慮義務が存在するのだと信義則上導かれたり、マンション販売についての説明義務を信義則上導く等の例があります。
3項
権利濫用
権利があるからといってなんでも許されるわけではないというものです。
権利濫用とされるか否かは、権利者の受ける利益と相手方の被る損害を比較して、社会全体の利益という基準によって判断するようになっています。
有名な判例では、温泉を経営しているものに、その温泉の管が少しだけ通っている土地を買い付けて、「自分の土地だから、管を除去しろ」と求めたこといついて、権利濫用として認めなかったものがあります。(宇奈月温泉事件)
そのほか、あまりに権利濫用が激しいと権利そのものがはく奪されることもあります。(親権濫用等)