解説民法 民法3条の2
解説民法 第6回
第3条の2
法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。
(2020年4月1日施行)
債権法大改正に伴って、判例を明文化したものです。
意思能力とは、売買だとか賃貸借などの法律行為を行うにあたって、自己の行為の結果を判断することのできる精神能力をいい、正常な認識力と予期力を含むと言われています。
そもそも、人は自己の意思に基づいて、権利を取得し、義務を負担します。(私的自治の原則)
人が、契約などを行って、その結果の責任を負う為には、その結果を判断するのに必要な能力がなければ適当ではありません。
従って、そのような能力がない場合には、契約等を無効としなければ、むやみに判断しない結果に責任を負うこととなってしまいます。
このような考え方の元、判例(大判明治38年5月11日)は早期からこの考え方を採用しています。
そのあり方について考え方が分れていますが、
1 個別具体的な法律行為の内容にかかわらず一律に判断
2 個別具体的に判断
と包括的に考える説と、個別具体的な場面ごとに判断できるかを考える説があります。
そして、このような意思能力がない方がした法律行為は、無効であるとするのがこの条文です。
判断力の低下した高齢者などが、不当な契約などをしてしまって被害を被ることを防ぐ役割を果たします。裁判でもこういった主張を必要とする場面は、高齢者社会にあっては、今まで以上に多くなっていくことと思われます。
そのような社会情勢にあって、民法大改正の中で、判例上認められていたものを正式に条文として明文化しました。
なお、無効主張ができるのは、意思無能力者側(判断できない高齢者等)からのみであって、相手方からはできません。
(例えば、悪徳業者がある場面で無効になってしまった方がいいと考えても、悪徳業者からの意思能力がないことを根拠とする無効主張はできない。)