解説民法 民法8条 成年被後見人及び成年後見人
解説民法 第9回
旧禁治産制度では配偶者が当然になることになっていましたが、新法では、個別の状況に応じて適任者を選任し、その人数も制限しないこととなりました。
また、法人も許容されています。
法人についてはなんらの制限は条文上されていませんので、営利法人でも条文上は許容されています。
但し、本人にとって適当かどうかという点が考慮されますので(民法847条)、法人も人間と同じように評価するということでもありません。
実際の運用としては、元々選任対象の主力の資格者である弁護士、司法書士、社会福祉士の法人版である弁護士法人や司法書士法人、社会福祉法人の例は多くありますが、その他の法人の例はあまり多くはありません。
(NPO法人など少しずつ増えて行っているかもしれません。)
積極的な法人の利用例としては、後見人が個人であると問題が生じうる事例の場合(例えば、周囲とトラブルがあって、後見人に対しても危害が加えられる懸念があるような場合等)に、担当責任者が誰であるのか不透明にさせる為に、公益社団法人が選任されるというような形で利用されています。
「審判を受けた者」
判断力が失われていた場合でも、審判がない限り、成年被後見人ではありません。
成年になったことで、単独で法律行為をする資格を得られるわけですが、一方で資格を得る事で社会の荒波に揉まれるのが前提であるところ、成年後見開始の審判を得ることで、その荒波から守られ、適切な生活等を営めるような状況を作りやすくすることになります。(法律の目的として。実際には簡単にはいかない場面もありますが。)
しかし、それには、家庭裁判所への申立と審判を必要とするということになります。
なお、誰が成年後見人に選任されるかは、裁判所の判断となっています。
実務上は候補者を上げられますし、原則的にはその候補者を第一候補として選任を検討されます。
しかし、ご本人にとって、候補者が適当でないと裁判官が判断すれば、別の者が成年後見人として選任されます。
なお、民法6条で成年後見開始を、民法7条で成年後見人を付することを定めています。
つまり6条と7条の関係性は、6条の判断があって、7条に移るというもので、別々のものと捉える必要があります。
これが具体的になにが問題になるかと言いますと、例えば、後見申立が認められなかった場合、認められるべきだとし不服申し立てができるのですが、成年後見が開始された上で(民法6条)、選任された後見人(民法7条)は嫌だとして不服申し立てが可能かというとこれはできないことになっています。成年後見人に誰が付されるかは家庭裁判所の専権事項であって、7条の判断については、不服申し立てはできないことになっていることに注意が必要です。