労働トラブル

解雇

解雇で法的に争う方法には二つあります。

方法A 解雇そのものを争う。(労働者としての地位を確認し、給料を請求する。)
方法B 解雇を認めた上で、解雇予告手当を請求する。(30日より少ない予告で解雇をされている場合のみ可能)

まず方法B「解雇を認めた上で、解雇予告手当を請求する。」から考えてみましょう。

1 解雇したこと、解雇時期に争いがない場合。(30日に満たない予告だったことに争いがない)

この場合は、解雇予告手当が勝つことのできる確率は極めて高いと言えます。

2 解雇したこと、解雇時期に争いがある場合。

自分で辞めたのだという主張をされることがあります。

この場面では、方法Bの解雇予告手当の請求をする場合は、あまり勝てません。

解雇予告手当の請求で求められる証拠

1雇用契約のあったこと
2即時解雇されたこと
3平均賃金の算定の証拠(平均賃金の30日分の給与を求めるので、その根拠となるもの)

このうち、雇用契約のあったことで争いになることは少ないでしょうから、その証拠はなくても問題にならないかもしれませんし、3は給与明細があれば計算可能ですし、なくても振込なら銀行通帳などでもある程度は立証可能です。

問題は2の「即時解雇されたこと」です。
解雇は退職の30日前に伝えなければ、その日数に足りない分の解雇予告手当を支払わなければなりません。

しかし、この「30日前なのかどうか」についてが、立証が難しいのです。
さらに、退職の事実が自主退職なのかどうかというところも論点になります。

例えば、4月1日に「明日から来なくていい」と解雇されたとします。
そこで、解雇予告手当を請求しようとしたら、
相手方はこんなことを言うかもしれません。
「解雇と伝えたのは、3月1日だ」
こうなると、3月1日なら30日以上前に伝えたこととなり、解雇予告手当は発生しません。

「いや、おかしい!4月1日に言われた!」
と争いになるでしょう。
そうすると、この証拠の有無が、裁判の論点になります。

しかし、口頭で解雇を告げられた場合、それがいつだったかを立証するのは、極めて困難です。

ですので、解雇を認めた上で、解雇予告手当を請求するというのはなかなか勝ちにくいのです。

方法A 解雇そのものを争う。(労働者としての地位を確認し、給料を請求する。)の場合

この場合、解雇時期に争いがあったとしても、解雇予告手当よりも勝ちやすくなります。

解雇を争う上でスタート時点で労働者に主張が必要なのは以下のことです。
1労働契約があったこと
2解雇がされたこと
3普通に働いていたこと

先ほどの解雇時期というのは、労働者に求められていません。
この3つについて会社が否定することはあまり考えられません。

そうすると、この裁判では何が論点になるかですが、法律は、労働者ではなく、会社側にその論点の証拠を求めます。

会社側に次のものを要求します。

解雇を争う上でスタート時点で会社側に主張が必要なのこと。
1解雇がどういう理由でされたのか
2解雇してもしょうがないと言える理由についての事実

つまり、解雇の理由について、もっともであると裁判官に納得させないといけないのは会社側にあるということになります。

会社側の立証する解雇の理由に関する事実に対して、労働者は、それに対して反論する形で裁判は進みます。
そして、会社側の解雇理由について、立証がされたと裁判官が判断しなければ、労働者側が勝ちます。

解雇予告手当と違って、解雇無効で争う場合に、立証の負担を負っているのは会社だということが大きなポイントです。

裁判所は、立証しないといけないことについて、立証ができなかったら、その事実はなかったこととして扱います。

ですので、解雇無効の争い方の方が、労働者にとっては、勝つためのハードルが一般的に低いということになります。

イジメ・パワハラ・セクハラ

精神的に追い詰める卑劣な行為です。
これらが発生している場合、会社は働きやすい労働環境を保全する義務がありますので、加害者だけでなく、会社が責任を負います。
私は、労働事件以外も関わってきましたが、精神に負担をかけるとどうなるかを身近な実体験で知っています。

精神疾患を誘発し、ときには自殺を試みる方もいます。

ただ、必ずしも、社会がこれを受け止めてくれておらず、被害者は、こころないものの為に二次被害を受けることも少なくありません。二次被害はおそらく相談現場でも起きているかと思います。

  • 証拠
    録音なんてしてないし・・・という方がほとんでしょう。
    でしたら、メモや日記を付けるようにしてください。
    日時や場所、どんな状況で行われたかを記録していれば、証拠になりえます。
    メモはそれのみを目的として作られていたり、主観的な記載にとどまる場合は、証拠価値が低いです。
    客観性を残す為には、それのみを目的にしたものではなく、日々の日記の中に表れるようにしたり、他人が見て、「後から都合のよいようにも書けるよな」と思われないような記載である必要があります。

残業代や未払い賃料

サービス残業が当たり前のようにされている日本。
本来、残業すれば、その時間に応じた残業代が発生しています。
労働基準法は、雇い主に労働時間の管理を義務付けるなどし、その正確な把握に努めるようにしています。

ですが、実際はきちんと守られておらず、残業時間の認定をするのに問題が生じます。

メモは自由に書けてしまいますので、証拠価値があまり高くなく、客観的な記録になるものが望ましいです。

サービス残業を強いられている人は、必ず、証拠作りをするようにしてください。
この一ヶ月だけでもあったら、他もそうなんじゃないかという資料にも使えるかもしれません。決してあきらめないで。

もう退職してしまったなど、過去の残業時間を直接証明できなくても可能性は十分残されています。

例えば、同じ仕事をしている人がいつも何時に帰っているかなど。
お子さんを預けて、仕事をしていたなら、そのことなど。

ようは、このくらい仕事してたろうというのがわかりさえすればいいのです。

会社側が保有する資料で分かる可能性もありますね。

未払い賃金は2年で時効ですので、ここ2年分しか現実的には請求できません。仕事を辞めた方は特に急いでください。二年分といえど、100万円を超えることは少なくありません。


次に取り得る手続きについて見てみましょう


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大阪の司法書士 鈴木啓太 
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